聴神経鞘腫(ちょうしんけいしょうしゅ)

疾患症状について

聴神経腫瘍は、片側の耳が聞こえにくい、耳鳴りがする、めまいやふらつきを感じる、顔の一部がしびれる、顔が動かしにくいなどの症状をきたす良性腫瘍です。癌や脳卒中のように放っておくと命を落とすようなものではないのですが、脳幹という脳の中枢を圧迫してしまっている大型のものは早期に手術を行ったほうが良いとされています。

検査・診断

造影剤や放射線を使わないMRIで診断することができます。手術をする場合は周囲の骨や血管の情報を得るために造影剤を用いたCTを行います。

治療法(手術)

小型のもの、無症状のものは経過観察をお勧めすることが多いです。聴神経腫瘍の大きさや残存している聴力、顔の動かしづらさなどに応じて手術や放射線療法を行います。

手術を行う場合は、音を聞くための神経である聴神経や、顔を動かすための神経である顔面神経などを損傷しないように、手術中に専用の装置を用いて各神経の機能を持続的にモニタリングしながら摘出します。腫瘍の位置によっては頭蓋骨の一部を削る頭蓋底手術の操作を行うことも多いです。

大型の聴神経腫瘍の場合は、脳幹への圧迫を解除するためにある程度摘出したうえで、全て摘出しようとすると危険な場合は、後日放射線治療を行うこともあります。

経過

経過観察する場合は、腫瘍の大きさや聴力がどれくらい残っているかに応じて半年〜1年に一度MRIを行います。経過観察中に大きくなってくる場合は手術をお勧めします。

徐々に聴力が低下してくる患者さんが多く、発見時には小型で増大する速度がゆっくりなものでも、15年ほどするとかなりの率で聴力が失われてしまいます。手術を行った場合、大型のものでは6割程度の患者さんで聴力を失うとされており、聴力の温存は非常に困難な病気と言えます。

術後は概ね10日程度で退院、日常生活に復帰できることが多いです。