脳動脈瘤(のうどうみゃくりゅう)

疾患症状について

脳動脈瘤は破裂すると、くも膜下出血という脳卒中になってしまいます。破裂してしまった動脈瘤は緊急手術が必要なのですが、破裂していないものは全く症状がないことがほとんどです。

破裂していないものを未破裂脳動脈瘤と呼びますが、これが脳ドックや何かしらの精査のためのMRIなどで偶然見つかることがあります。この未破裂脳動脈瘤は、部位や大きさ、形態によって、破裂してくも膜下出血になってしまうものが年間0.5〜5%程度あるとされています。あるいは大型のものはもっと破裂率が高いとも言われています。

見つかった未破裂脳動脈瘤の部位や大きさ、形態に応じて、治療そのもののリスクと天秤にかけて、経過観察や手術での治療など方針を選択していきます。一部の癌などのように「手術をしないと悪化する」というような病気ではなく、手術をしなくとも一生破裂せずに過ごせる可能性も十分にあります。

脳卒中の予防のための手術を受けるのか、治療をするならどのような手術が適しているのか、時間をかけて相談していくことが肝心だと考えています。一方、大型の動脈瘤が脳や神経を圧迫し、頭痛やものが二重に見えるなどの症状で発症することもあります。その場合には手術による治療が必要となります。

検査・診断

動脈瘤があるかどうかは、造影剤や放射線を使わないMRIを用いた血管検査であるMRAで判断がつくことがほとんどです。そのため、何かしらの病気を疑って脳の検査をする場合や脳ドックなどでは、このMRAを撮像して脳動脈瘤がないかをチェックします。

もしMRAで脳動脈瘤を疑う場合やMRIが撮れない患者さんの場合は、精密検査として、造影剤を使用したCT検査であるCTAで血管の撮影を行います。あるいは、さらに精密な血管の情報が得られるカテーテルを用いた血管造影検査を行うこともあります。

名戸ヶ谷病院脳神経外科では予約や紹介状などがなくとも、検査が必要な患者さんにはその日のうちにMRI撮像が可能な体制を整備していますので、お気軽にご相談下さい。

治療法(手術)

未破裂脳動脈瘤に対しては、1. 経過観察、2. カテーテル手術、3. 開頭手術の3つの選択肢があります。見つかった動脈瘤の大きさや部位に応じてある程度の年間破裂率がわかるので、それに応じて経過観察をするのか手術をするのかを話し合います。手術を行う場合は、カテーテル手術と開頭手術それぞれのメリット・デメリットがあるので、それを十分にお話した上で、当院での治療成績を踏まえて治療方法をご相談していきます。

カテーテル手術は開頭手術と比較して容易であることが多く、頭を開けなくて良いという大きなメリットがある一方で、再発する例が一定数あり、あるいは抗血小板薬の内服が必要な場合もあるという問題もあります。

一方で、開頭術は頭を開ける必要があるのですが、当院で行う場合は脳・神経など正常構造は確実に温存するのは当然のこと、必要に応じて複雑なアプローチや超高難度のバイパスなどを駆使してでも動脈瘤を根治する技術を有しており、また整容面にも非常にこだわって手術を行っているため安心して治療を受けていただけます。

動脈瘤が見つかった年齢や部位に応じて、どちらの治療かを自信をもって提案します。さらにはこの2つを組み合わせた治療をも提案できる、二刀流のハイブリッドな脳外科医が治療方針の決定をお手伝いいたします。

脳動脈瘤が破裂してくも膜下出血を発症してしまった場合は、昼夜問わず直ちに緊急手術を行うことが可能です。破裂瘤は病院到着時にはすでにいったん破裂による出血が止まっていることがほとんどなのですが、再破裂して致命的となったり後遺症などにつながる確率が高くなってしまうため、72時間以内に手術をすることが推奨されています。

とは言うものの、いつ再破裂するかもわからない爆弾を頭の中に抱えている患者さんに、病院側の都合のよいタイミングまで待っていただくような診療体制では地域のみなさまに安心いただけないと考え、当院の脳卒中センターでは24時間365日いつであっても開頭手術・カテーテル手術ともに直ちにベストな治療が行えるようスタッフを配備しています。

経過

未破裂脳動脈瘤を経過観察する場合は、その想定される破裂リスクに応じて数ヶ月〜数年に一度、外来でMRAやCTAの検査をして破裂リスクが高まっていないかの評価をします。

カテーテル手術を行う場合は、手術前日に入院して各検査を行い、ほとんどの患者さんは術後数日程度での退院が可能です。退院後はすぐに日常生活に戻ることができます。

開頭手術を行う場合も同様に手術前日に入院、術後1週間程度で創部の経過観察の必要度が下がったところで退院となることがほとんどです。患者さんのご希望に合わせた術後数日で退院いただき、外来にて創部の経過を診察することも可能です。

開頭術後の日常生活への復帰には個人差があり、一時的に頭痛やふらつきを感じられる場合もありますが、概ね術後2週間程度で元通りの生活が可能になります。